富豪の倒産

バブルの時代を象徴した不動産会社が今月1日、ひっそりと会社更生手続きの開始決定を受けた。米経済誌フォーブスに「世界6位の富豪」と紹介された渡辺喜太郎氏が、でっち奉公から身を起こし、土地と株を巧みに操って一代で築き上げた「麻布建物」だ。負債総額5000億円以上は今年最大の倒産。

≪富豪一転、負債7000億円≫

 「右手に土地、左手に株」と言われるほど株の売買にも熱心だった麻布建物の渡辺喜太郎氏。絶頂期は、米投資家のブーン・ピケンズ氏と組んで、トヨタ自動車系部品メーカーの小糸製作所の株を買い占めて話題になり、米経済誌フォーブスに「世界6位の富豪」とも紹介された。

 だが、バブル崩壊で経営は暗転。保有資産の価値が暴落し、「貸しはがしが起こった」(金融機関の元関係者)ことで資金繰りに窮した。グループの負債は一時、7000億円に上った。

 自身も平成9年、所有不動産の債権者による差し押さえを逃れようとしたとして、強制執行妨害容疑で逮捕。13年にも同容疑で逮捕されたが、このときは広域暴力団の会長が共謀者で捕まった。

 事情に詳しい関係者によると、「負債の大半は整理回収機構などに譲渡され、賃貸ビルなど国内資産はほとんどが処分された」という。

 残りの資産の大半は米国にあり、昨年米連邦破産法11条にもとづき倒産手続きを申請。これに伴い今年6月、東京地裁への会社更生手続きの申し立てが行われた。渡辺氏はもう役員としても株主としても、麻布建物には関与していない。

 それにしても、第一不動産や末野興産、秀和など同時期に隆盛を誇ったバブル企業と比べ、異例に長く命脈を保った。苦労人ゆえの驚異的な粘りで抵抗し続けたのか。麻布建物の倒産こそ、バブルの終焉(しゅうえん)にふさわしい。

 最近まで本社を構えた東京・東麻布のビルは、すでに解体工事が始まっていた。跡地にはホテルが建つ計画だという。

 金融機関元関係者は、「不動産経営者ならある『夢』を、渡辺氏からは感じなかった。『自分の不動産を増やしたい』との思いしかなかったのでは」という。ある不動産関係者はいった。「第2の麻布建物は出ても、渡辺さんのようにしぶとい人は出ないかもしれない」

| 住宅

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。